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目次
中心静脈カテーテル(CVカテーテル・CVC)とは
中心静脈カテーテルは、高カロリー輸液や薬剤注入、採血、静脈圧測定を行うために、おもに内頸静脈・鎖骨下静脈・大腿静脈から挿入し、カテーテル先端を中心静脈(上大静脈または下大静脈)に留置するカテーテルです。中心静脈カテーテル;Central Venous Catheterを略して、CVCやCVカテーテルと一般的に呼ばれています。
CVカテーテルの適応
経口摂取や経腸栄養ができない場合、高カロリー輸液(TPN)を投与する場合、末梢静脈が確保できない場合、薬剤を中心静脈から投与する必要がある場合をCVカテーテル挿入の主な適応とします。
中心静脈カテーテルの適応
- 経口摂取や経腸栄養ができず経静脈栄養の適応になる場合
- 末梢静脈が確保できない場合
- 中心静脈圧測定が必要な場合
- 昇圧薬などの薬剤で、中心静脈からの投与が必要な場合
- 透析用カテーテルの場合
- 体外式一時ペーシングの場合もこれに準ずる
(「中心静脈カテーテル管理マニュアル」監修:済生会熊本病院)
CVカテーテルのメリットとデメリット
●カテーテル先端が循環血流量の多い中心静脈に留置されるため、高カロリー輸液や刺激の強い薬剤も血流により希釈され、血管痛や静脈炎等のリスクが少なく安定した薬剤投与が可能な点は、中心静脈カテーテルの大きなメリットです。
また、カテーテル留置中は薬剤投与のたびに血管を穿刺するという必要がないため、患者の痛みやストレスも軽減されます。
●一方、デメリットとしては、カテーテル挿入時の機械的合併症のリスク(動脈誤穿刺やカテーテル迷入等)や、留置中のカテーテル関連血流感染症(CRBSI)等のリスクが挙げられます。合併症や感染等のトラブルを未然に防ぐための対応策が大変重要です。
「CVCトラブルシューティング・マニュアル【Novellus Vol.33】」では中心静脈カテーテル取扱いの4つのフェーズ(準備段階、処置中、管理中、抜去時)それぞれで起こり得るトラブルについて、回避策・対応策がまとめられています。ぜひご参考にしてください。
CVカテーテルの挿入部位
中心静脈カテーテルの主な挿入部位は、内頸静脈、鎖骨下静脈、大腿静脈があります。
内頸静脈、鎖骨下静脈から挿入した場合はカテーテル先端を上大静脈へ、大腿静脈から挿入した場合はカテーテル先端を下大静脈へ留置します。
「血管内カテーテル関連感染防止CDCガイドライン2011」では、大腿静脈は、内頸静脈や鎖骨下静脈と比較して血流感染の割合が高いといういくつかの研究報告により「成人の場合、中心静脈アクセスには、大腿静脈の使用は避けること」とカテゴリーⅠAにて推奨されています。ガイドライン等を参照し、安全な中心静脈穿刺を実施しましょう。
いずれの部位においても穿刺時の合併症のリスクを軽減するためにエコー(超音波)ガイドを使用することは有用です。
関連資料:大腿静脈穿刺のトラップ【Novellus Vol.42】
大腿静脈への中心静脈カテーテル挿入時に発生しやすいトラブルと、その罠に引っ掛からないための注意点や安全な穿刺について記載されています。
CVカテーテルの種類・構造
CVカテーテルの種類
CVカテーテルの種類は、カテーテルのルーメン数、サイズ(太さ・長さ)、キット内容、耐圧タイプかどうか、等で様々な種類があります。各メーカー、製品により異なりますので、ご使用中の製品の添付文書やパッケージ等でご確認ください。
ルーメン(内腔)の数
シングルルーメン、ダブルルーメン、トリプルルーメン、クワッドルーメン等があります。
それぞれのルーメンは独立しており、各ルーメンから同時に投与してもカテーテル内で薬液が混ざることはありません。
カテーテルの種類によって、それぞれのルーメンの出口の位置や内腔の広さが異なります。
メインルーメン(DISTAL)が最も内腔が広く、カテーテルの先端から薬液が出ます。サブルーメン(MIDDLE、PROXIMAL)はメインルーメンよりも内腔が狭く、先端から約1~4cm※離れた側孔から薬液が出る仕様になっています。
(※Argyle™ Fukuroi SMAC プラスの場合。製品により異なります。)
高カロリー輸液、粘度の高い薬剤、脂肪乳剤等はメインルーメンからの投与が一般的ですが、薬剤の種類や量によってルーメンを選択し、薬液投与前後には十分にフラッシュを行いましょう。
関連FAQ:CVカテーテルのダブルルーメンやトリプルルーメンはどういう構造ですか。
CVカテーテルのダブルルーメン・トリプルルーメンを使用していますが、どれがメインルーメンですか。
「血管内カテーテル関連感染防止CDCガイドライン2011」では、患者の管理に必要なポート数、またはルーメン数のCVカテーテルを使用することが推奨されています。
投与する薬剤の目的、種類、量に応じてカテーテルを選択し、必要がなくなった場合には早急に抜去しましょう。
CVカテーテルとCVポート/PICCの違い
CVカテーテルとCVポートの違い
CVカテーテルとCVポートの違いは、カテーテルが挿入部から体外に出ているか、すべて体内に埋め込まれているかという点です。
CVカテーテル
- カテーテルが挿入部から体外に出ている。
- 輸液セットをつないですぐに薬液投与が開始できる。
- マルチルーメンカテーテルを使用すれば複数薬剤の同時投与が可能。
- カテーテルが邪魔になることがあるため固定の工夫が必要。
- カテーテル関連血流感染の防止のためより慎重な管理が必要。
CVポート
- カテーテル、ポートすべて体内に埋め込まれている。
- 邪魔にならず行動制限も少ないため在宅での管理がしやすい。
- 年単位での長期間の使用が可能。
- 薬液注入にはヒューバー針の準備が必要。
- 埋め込みや抜去時には小手術が必要。
▼CVポートについて詳しくはこちらをご覧ください。
関連記事:CVポートとは?CVポートの安全な留置・穿刺・管理について
CVカテーテルとPICCの違い
PICCは「末梢挿入式中心静脈カテーテル」であり、中心静脈カテーテルの一種ですが、名前の通り上腕部の末梢静脈から挿入される点が異なるため本記事ではCVカテーテルとPICCを区別して記載しています。
PICCはCVカテーテルと比較して重篤な機械的合併症のリスクが少なく安全性が高いと言われており、CVカテーテルの代わりにPICCを選択されるケースも増えてきています。
一方、CVカテーテルの方が一般にカテーテル径が太く、クワッドルーメン(4ルーメン)までの種類があるため、緊急時の大量輸液や多剤同時投与が必要なケースにおいてはCVカテーテルが第一選択となることが多く、症例や投与薬剤によって適切なカテーテルを選択することが大切です。
▼PICCについて詳しくはこちらをご覧ください。
関連記事:PICCとは?PICCの基本知識と安全な取り扱い方法・看護のポイント
CVカテーテルの挿入手順
CVカテーテルの主な挿入方法は、スルーザカニューラ法とセルジンガー法があります。CVカテーテル挿入時には、マキシマルバリアプリコーション(帽子、マスク、滅菌ガウン、滅菌手袋、全身を覆う滅菌ドレープ)下で実施することが推奨されています。
スルーザカニューラ法
スルーザカニューラ法は穿刺したカニューラ針のカニューラにカテーテルを挿入して留置する方法です。
- カニューラ針にて血管を穿刺し、静脈血のフラッシュバック(逆流)を確認後、内針である金属針を抜き、カニューラのみ残す。
- 血管に残っているカニューラの中にカテーテルを 通して留置する。
- カテーテル留置後、カニューラをピールオフして(引き裂いて)取り除く。
スルーザカニューラ法のメリット:
・手技が非常にシンプル。
スルーザカニューラ法のデメリット:
・挿入するカテーテルよりも太いカニューラ針で穿刺が必要であるため侵襲が大きい。
・またセルジンガー法に比べてカテーテルが迷走するリスクもある。
関連製品(スルーザカニューラ法で留置):Argyle™ Fukuroi CV カテーテル キット
セルジンガー法
セルジンガー法は、ガイドワイヤを血管内に先行させ、ガイドワイヤに沿わせてカテーテルを留置する方法です。
一般的なセルジンガー法の流れは以下です。
- カニューラ針※にて穿刺し、静脈血のフラッシュバック(逆流)を確認後、内針である金属針を抜き、カニューラのみ残す。
- 血管に残っているカニューラ※の中にガイドワイヤを入れ、中心静脈まで進める。
- カニューラを抜き、ガイドワイヤのみ血管内に残す。
- 残ったガイドワイヤーの周囲に2㎜ 程度の皮膚切開を加え、ダイレータで 血管拡張を行なう。
- ダイレータを抜き、ガイドワイヤに 沿わせてカテーテルを 挿入し、最後にガイドワイヤを抜き取る。
※カニューラ針ではなく金属針を使用する場合もあり、その場合は金属針の中にガイドワイヤを通していく。
セルジンガー法のメリット:
・留置するカテーテルが太くても、細い針で穿刺できるため低侵襲である。
・ガイドワイヤを先行させるので、カテーテルを安全確実に中心静脈に留置しやすい。
セルジンガー法のデメリット:
・スルーザカニューラ法に比べて手技がやや煩雑。
・ガイドワイヤ後端が不潔になりやすいため注意が必要。
▼▼手技動画もご確認ください!▼▼
関連製品(セルジンガー法で留置):
Argyle™ Fukuroi SMAC プラス(潤滑コートダイレータで皮膚切開が不要)
Argyle™ Fukuroi SMAC プラス マイクロニードル タイプ(細径穿刺針+ガイドワイヤでより低侵襲なキット)
Argyle™ Fukuroi CV カテーテル セルジンガー キット
エコーガイド下穿刺
CVカテーテル留置の際、エコー(超音波)にて血管の位置や走行を確認し、エコーガイド下にて中心静脈穿刺を行うことは、機械的合併症のリスク軽減のため、重要かつ一般的になってきております。エコーの取り扱いやコツ等、以下の動画をご参考にしてください。
また、中心静脈穿刺は、機械的合併症が生じるリスクの高い手技であるため、専門の医師のみが実施する等、中心静脈穿刺をする医師の資格を規定している施設もあります(CVC認定医制度)。
関連資料:
当院における中心静脈カテーテル留置抜去報告制度の取り組み【Novellus Vol.31】
機械的合併症ゼロを目指して~CVC挿入認定医制度導入におけるアウトカム【Novellus Vol.16】
当社では、安全なカテーテル挿入のため、シミュレータを用いたハンズオントレーニングをサポートしています。
シミュレータ、カテーテル、エコー等を使用した実践的なトレーニングをご検討の方は、お気軽にご相談ください。
CVカテーテルからの造影剤注入
CVカテーテルからの造影剤注入は、耐圧タイプのカテーテルであれば、実施可能です。
耐圧タイプではないカテーテルの場合、液漏れ・カテーテルの破断・先端位置のずれ等のおそれがあるため、造影剤の高圧注入投与は行わないでください。
当社のSMACプラス耐圧タイプの場合、メインルーメンのハブ(コネクタ)色は紫色で、クランプには最大注入速度を印字しております。
関連FAQ:CVカテーテル・PICCより造影剤の注入は問題ないでしょうか。
CVカテーテルVカテーテルのダブルルーメン・トリプルルーメンを使用していますが、どれがメインルーメンですか。
CVカテーテルの留置中の看護・管理方法
CVカテーテルの留置期間
CVカテーテルの定期的な交換はガイドラインにより推奨されていません。留置期間に関わらず、カテーテル等に不具合が生じた場合には交換をしてください。
CVカテーテルの留置中の観察項目
- ドレッシング材が剥がれていないか。
- 挿入部位の発赤、熱感、疼痛、排膿の有無。
- カテーテルが抜けていないか。(挿入長マークの確認、抜けかけている場合は医師へ報告)
透明フィルムドレッシング貼付時の注意点
- カテーテル挿入部観察のため、挿入部がフィルムの中心になるようにドレッシング材を貼付します。
- フィルム内に空気ができるだけ入らないように密着させます。
- 頸部や鼠径部の場合、皮膚を伸展させた状態で貼付します。
- ドレッシング材の交換日を明記します。
- 血液などによる汚染を認めた場合は交換します。
輸液ラインについて
- 輸液ラインやCVカテーテルを操作する前に必ず手指衛生を実施しましょう。
- 輸液ラインとCVカテーテルを接続する際には、かならずハブを70%アルコール綿でゴシゴシしっかりと消毒しましょう。
- 輸液ラインの交換は施設ごとに基準を設けて実施しましょう。
※「中心静脈カテーテル管理マニュアル」 より抜粋。
CVカテーテルからの採血
CVカテーテルから採血することはできますが、カテーテル内に残った輸液が検査データに影響を与える可能性があるため、可能な限り、末梢からの採血が推奨されております。
また、カテーテル内に血液を通した場合は、カテーテルを充分パルシングフラッシュしてください。
関連FAQ:中心静脈カテーテルから採血は可能ですか。
まとめ
CVカテーテルは、高カロリー輸液や刺激性の薬剤等を安全かつ確実に投与することができるため、医療現場において日常的に使用されている医療器具です。しかし、中心静脈穿刺に伴う機械的合併症のリスク、留置中のカテーテル関連血流感染症(CRBSI)等のリスクもあり、これらを予防するための安全対策が重要です。ガイドラインや施設ごとのマニュアルに沿って安全なカテーテル管理を実施するようにしましょう。
CVカテーテルについてのお役立ち情報
【連載】看護師のための輸液講座(外部サイト)
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