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PICCとは
PICCとは、Peripherally Inserted Central Venous Catheterの頭文字をとったもので、日本語では「末梢穿刺中心静脈カテーテル」や「末梢挿入式中心静脈カテーテル」等と訳されます。主に、腕の末梢静脈から挿入し、カテーテルの先端が中心静脈(上大静脈)に留置されるカテーテルのことを言います。通称「ピック」とも呼ばれます。
PICCの適応
PICCは、薬剤(薬液)・栄養剤等の注入、採血、静脈圧測定等を目的として留置します。
末梢投与がふさわしくない症例(高カロリー輸液、循環作動薬、抗がん薬など)で、一週間以上の点滴が必要な場合はPICCを選択することを検討します。
VADコンソーシアムガイドラインでは、投与薬剤の侵襲性や輸液治療期間によりデバイス選択アルゴリズムを以下の図のように表しています。

出典:輸液カテーテル管理の実践基準 輸液治療の穿刺部位・デバイス選択とカテーテル管理ガイドライン編日本VADコンソーシアム P46
PICCとCVカテーテル/CVポートの違い
PICCとCVカテーテルの違い
CVカテーテル(Central Venous Catheter;中心静脈カテーテル)は主に鎖骨下静脈・内頸静脈・大腿静脈からカテーテルを挿入し、先端が上大静脈(鎖骨下静脈、内頸静脈からの場合)、下大静脈(大腿静脈からの場合)に留置されるカテーテルです。
PICCとCVカテーテルの大きな違いは、挿入部位が異なります。
PICCとCVカテーテルの挿入部位
- PICC ⇒上腕部の末梢静脈から挿入
- CVカテーテル ⇒内頸静脈、鎖骨下静脈、大腿静脈 等から挿入
PICCもCVカテーテルもカテーテルの先端は中心静脈へ留置します。

使用目的はPICCもCVカテーテルも薬剤(薬液)・栄養剤等の注入、採血、静脈圧測定等で共通ですが、CVカテーテルの方が一般にカテーテル径が太く、シングルルーメンからクワッドルーメン(4ルーメン)まで種類があるため、緊急時の大量輸液や多剤同時投与が必要なケースにおいてはCVカテーテルが選択されます。
一方、CVカテーテルは穿刺時の機械的合併症(動脈誤穿刺、血腫、血胸、気胸等)やカテーテル関連血流感染(catherter-related bloodstream infection,CRBSI)のリスクがPICCと比較すると高く、エコーガイド下での安全な留置や感染対策が重要です。
PICCとCVポートの違い
CVポート(皮下埋め込み型中心静脈ポート)は前胸部などの皮膚の下に埋め込み、 皮膚の上からCVポートに専用の針を刺すことによって、 薬剤を中心静脈とよばれる太い静脈内に確実に注入することのできる医療機器です。
カテーテル先端が中心静脈へ留置されることは共通ですが、PICCやCVカテーテルのように体外にカテーテルが出ておらず、皮下に埋め込まれているため目立たないことがCVポートの特徴です。薬液注入時以外は体に接続されているルートがありませんので、行動制限がほとんどなく入浴や軽い運動も可能です。
PICCとCVポートの挿入・留置部位
- PICC ⇒上腕部の末梢静脈から挿入
- CVポート ⇒鎖骨下、頸部、上腕 等にポートを埋め込み
PICCもCVポートもカテーテルの先端は中心静脈へ留置します。

CVポート留置は3ヶ月以上の長期的な留置が必要な場合に選択されることが多く、在宅での高カロリー輸液による栄養管理や抗がん薬治療(化学療法)等で広く実施されている手技です。
一方、埋め込みには小手術が必要なこと、CVカテーテルと同様に留置時の機械的合併症や留置中のカテーテル関連感染症等の合併症のリスクもあり、それぞれの特徴を理解したうえで患者に適切なデバイスを選択することが大切です。
関連記事:CVポートとは?CVポートの安全な留置・穿刺・管理について
PICCのメリット・デメリット
PICCのメリット・利点
- 機械的合併症のリスクが少なく、手技が比較的容易である
- CVCより感染率が低く、長期留置が可能となる
このような安全性の高さから、各種ガイドラインで推奨され市場に広がってきています。
CDCガイドラインでは「静脈投与期間が6日を超えると想定される場合は、ショートタイプの末梢静脈カテーテルの代わりにミッドラインカテーテルまたは末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)を使用すること(カテゴリーⅡ)」とされています。
医療事故の再発防止に向けた提言 第17号の「提言1」では、中心静脈カテーテル挿入時の「リスクが高い場合は、末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)による代替を含め、リスク回避策を検討し、適応は合議で決定することが望まれる。」とあります。
PICCのデメリット・課題
- 腕の運動が制限される(肘部屈曲による滴下不良)
- 静脈炎・血栓の発生頻度が比較的高い
できるだけ太い血管にできるだけ細いカテーテルを選択し、少ない穿刺回数で愛護的に挿入することがポイントです。
PICCの挿入手順
PICCの穿刺部位
PICCの挿入部位としては以下のような静脈があります。
- 上腕部 尺側皮静脈
- 上腕部 橈側皮静脈
- 尺側正中皮静脈

上腕の尺側皮静脈を第1選択とします。尺側皮静脈は、上腕の静脈の中では径が太いことが多く、近くに上腕動脈や正中神経が通っていないことから動脈損傷と神経損傷のリスクが低くなっていること、また上肢を外転させると尺側皮静脈から腕頭静脈までは直線に近くPICCの先端を上大静脈まで誘導しやすいということが主な理由です。
PICCの挿入手技
Argyle™ Fukuroi PICC キット(セルジンガータイプ)の挿入手順
※挿入方法は製品によって異なりますので、ご使用のPICC製品の添付文書に従ってください。


(注射筒で生理食塩水等をアダプタより注入し、ディスペンサ内を満たす)



参考:【手技動画】PICC手技_症例2 右上腕からのアプローチ 呉医療センター(0:09:14)
PICCの看護におけるポイント
PICCの固定方法
基本的にカテーテルと皮膚の固定はドレッシング材とテープで行います。
腕の動きでカテーテル全体が動きやすいため、しっかりとカテーテルが動かないように固定することが重要です。
ご使用のカテーテルの長さや留置血管により適切な固定方法は異なりますが、肘の屈曲に影響しないよう、直線固定または緩やかなループ固定を行い、カテーテルが折れないように注意しましょう。
参考:【動画】PICCキットの固定方法-3M™テガダーム™CHGドレッシング(1658R)を使用-
関連製品:Argyle™ Fukuroi カテーテル フィクスチャ(無縫合固定具)

PICCの観察項目
挿入部は毎日観察します。
以下の各チェック項目を参考に、感染や静脈炎等の兆候がないかどうか、挿入部、固定状態等を確認します。カテーテルが抜けてきていないか定期的に挿入長を確認することで、カテーテル先端位置のズレやカテーテル事故抜去のリスクを軽減することができます。輸液セットと接続されている場合は接続部に緩みがないかどうかも確認しましょう。
シャワー浴を行う際には、挿入部が濡れないように保護し、濡れてしまった場合にはドレッシング材の交換を行ってください。

PICC閉塞予防のために
カテーテル先端周囲に血栓が形成されたり、カテーテル内に投与薬剤が残っていることで、PICCが閉塞してしまい抜去が必要となる場合があります。PICCの各製品の添付文書に従って適切に管理し、閉塞を予防しましょう。
- カテーテルの留置中にカテーテル内に逆流した血液の凝固塊及び血栓が形成されるおそれがあるので、1日に1回カテーテル内腔をフラッシュし、ヘパリンロックしてください。(Argyle™ Fukuroi PICC キット添付文書より)
- PICCはカテーテル径が細いため、輸液終了後は、カテーテル内の残存薬液をしっかりパルシングフラッシュしましょう。
- 陽圧ロックにてヘパリンロックしてください。
PICCからの採血
Argyle™ Fukuroi PICC キットのカテーテル先端はオープンエンドタイプであり、PICCからの採血は可能です。しかし、カテーテル内に残った薬液の影響で検査データがぶれる可能性があることに注意が必要です。
採血前にカテーテルをフラッシュする、最初の血液5ccは廃棄する等、残存薬液の影響をなるべく受けないような方法で実施してください。
PICCから採血を行った場合は、ヘパリン加生理食塩水または生理食塩水で十分にパルシングフラッシュを行いましょう。
まとめ
PICCはCVCと比較し重篤な機械的合併症のリスクが少なく安全性が高いと言われており、PICCの選択・活用が広まってきています。また、PICCは診療看護師(NP:Nurse practitioner)や特定行為研修を修了した看護師(特定行為看護師)による挿入も増えてきており、2024年4月からスタートする医師の働き方改革の対策の一つである「タスクシフト」に関連して、PICCによるタスクシェアリングが進んでいくものと考えられます。⇒PICC お役立ち情報まとめ《診療看護師(NP)/特定行為研修修了看護師向け》
製品のメリットやデメリットをよく確認し、それぞれの製品にあった取り扱い、管理を行っていくことが重要です。
PICCについてのお役立ち情報
【連載】看護師のための輸液講座(外部サイト)
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