Case report ケースレポート
Novellus Vol.30
合成高分子コーティング付末梢留置型中心静脈カテーテル(PICC)の使用経験
中心静脈カテーテル留置は、機械的合併症などのリスクのある侵襲が高い危険な処置になります。
そのため、CVC挿入の厳格化が進んできております。
そこで、今回は、中心静脈カテーテルの合併症のリスクがどのぐらいあるのか振り返ってみましょう。
CVCの合併症として、2005年にNew England Journal から出されたJean-Jacques Parienti*1らの報告では、下記のとおりです。
大腿静脈は、機械的合併症の発生率は低いですが、血栓症や血流感染症の発生率は高いです。
一方、鎖骨下静脈では、気胸に代表されるような機械的合併症の発生率は高いですが、血栓症や血流感染症の発生率は低いです。
どのルートを選択しても、なんらかの合併症を伴う手技であることが分かります。
鎖骨下静脈 | 内頸静脈 | 大腿静脈 | |
機械的合併症 | 2.1% | 1.4% | 0.7% |
血栓症 | 0.5% | 0.9% | 1.4% |
血流感染症 | 0.5% | 1.4% | 1.2% |
また、CVCとPICCの比較では、2009年森兼*2らの報告によると、感染率は、1000カテーテル日あたり、PICC群:5.6、CVC群:7.0で、カテーテルがPICCである事が感染リスクの低下因子でした。
合併症については、CVC群では気胸や動脈穿刺が生じたのですが、PICC群では発生しておりません。
一方で、留置中の合併症としてCVCとPICCで血栓症を比較した2012年三浦*3らの報告によると、PICCでは0-20%に血栓症が生じる可能性があり、CVCでは、0-9.6%で、PICCの方が血栓症のリスクが高いとされています。
また、PICC群には静脈炎が多く見られています。
いくつかの報告にあるように、PICCは感染率や機械的合併症の発生率は低いのですが、静脈炎・血栓症のリスクは、CVCに比べ高いという一長一短であり、患者さんの状況によって、適切に選択する必要があります。
そこで今回は、合成高分子コーティング付PICCの挿入後、PICCの代表的な合併症である静脈炎・血栓症の発生が低率であったという大阪警察病院の事例をご紹介いたします。
各ご施設における中心静脈カテーテルの選択について振り返っていただき、患者さんにとって最適なカテーテル選択の一助になればと思います。
*1 Jean-Jacques Parienti他;1Intravascular Complications of Central Venous Catheterization by Insertion Site.
New england journal of medicine 373:1220-1229、2015
*2 森兼啓太他:末梢挿入型中心静脈カテーテルと従来型融資静脈カテーテルの多面的比較 環境感染誌,Vol24 no.5 2009
*3 三浦 光太郎他:末梢挿入型中心静脈カテーテル関連静脈血栓症を生じた2例、日臨外会誌73(2),304-308,2012
血管アクセスデバイスとしてPICCを第一選択としている理由
エコーガイド下によるPICCの挿入方法・管理方法
合成高分子コーティング付PICC挿入実績・結果
カテーテル関連血流感染/閉塞/周囲血栓/静脈炎は認めなかった
関連情報
-
静脈用カテーテル(CVC・PICC・Midline等)
Argyle™ Fukuroi PICC キット
セルジンガータイプが加わったPICCキット(末梢静脈挿入式中心静脈カテーテル) …
-
Novellus-医師のベストプラクティス-
Novellus Vol.37
合成高分子コーティングを施した末梢留置型中心静脈カテーテル(PICC)による症例検討
~PICCを用いた濃厚血小板輸血の可能性~施設紹介 はじめに 当院では末梢留置型中心静脈カテーテル(PICC)を2014年…
-
Novellus-医師のベストプラクティス-
Novellus Vol.29
進行癌患者における合成高分子コーティングを施した末梢留置型中心静脈カテーテル(PICC)の有効性について抗がん剤治療を完遂するために皆様が重要とされていることはどのようなことでしょうか…
-
Novellus-医師のベストプラクティス-
Novellus Vol.38
看護師によるPICC挿入チーム設立と多職種collaborationのメリット看護師によるPICC挿入チーム設立と多職種collaborationのメリット …
-
マニュアル/ハンドブック
マニュアル
末梢挿入式中心静脈カテーテル(PICC) 管理マニュアル
PICCは、診療看護師による挿入手技が可能になったことや、「医療事故の再発防止に…
-
手技動画
熊本大学病院におけるPICC挿入手技(0:05:53)
0:05‐体位/配置 外転+外旋位を取る。 エコーや透視装置のディスプレイを適切…
製品に関するお問い合わせ・
ご相談は、お気軽にどうぞ。
お電話でのお問い合わせはこちら
9:00-17:30
(土日祝日除く)
購入・見積・サンプルの
お問い合わせはこちら