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カーディナルヘルス メールマガジン コラム【第5回】
上大静脈に腫瘍の浸潤が及んだ化学放射線治療開始患者へのPICC挿入に関する1例報告

著者:岐阜県総合医療センター
   クリティカルケア認定看護師/天野 元浩 先生

はじめに

 化学療法におけるPICC(末梢静脈挿入式中心静脈用カテーテル)の挿入は、メリットが多く当院においても末梢静脈留置が困難な場合や長期留置が必要とされる場合に用いることが多い。

 PICC挿入のメリット・デメリットについてもう一度振り返ってみると、メリットは長期間の安全なルート確保が可能である。化学療法や放射線治療においては、静脈への持続的な薬剤投与が必要となる。化学療法に用いられる薬剤は、末梢静脈ルートでは投与しにくい高浸透圧薬剤や血管刺激性の強い薬剤が多いが、PICCを使うことで血管炎のリスクを低減し、血管へのダメージを軽減することができるため、頻繁なルート確保の必要がなくなる。また、在宅療法にも適用できるため、入院期間を短縮できることもメリットである。

 感染面においても鎖骨下や内頸静脈から挿入されるCVC(中心静脈用カテーテル)に比べカテーテル関連血流感染症(CRBSI)の発生率が低いとされている。施行においては外科的処置が不要で、超音波ガイド下にて透視室や状態に応じて病室で挿入可能である。一般的なCVC挿入と比べて、合併症(気胸・動脈損傷)のリスクが低いことが挙げられる。

 デメリット・注意点については、血栓形成のリスクや機械的合併症が挙げられる。PICC挿入に伴う血管内皮障害により血栓形成のリスクがあることや、手術後、敗血症、脱水、がん患者(特に膵臓がん、肺がん)は凝固系が亢進しているため血栓リスクが高い。また機械的合併症に対してはカテーテル閉塞、位置ずれ等適切な管理に注意が必要である。 今回、上大静脈に腫瘍の浸潤が及んだ化学放射線治療が開始されている患者へPICC挿入に関して他職種で検討を行い実施したため報告を行う。

症例紹介

【症例】60歳代 男性

【主訴】全胸部痛と腹痛

【現病歴】

 2023年1月前胸部と腹痛を認め近医院へ受診

 検査結果から肺腫瘍、肝障害、HbA1c8.3を指摘され

 当院へ紹介受診となった。

【既往歴】

 右肩の骨折

【家族歴】父:肺結核

【常用薬】

  1. ロキソプロフェンナトリウム水和物錠60mg3錠 1日3回朝・昼・夕食後
  2. レバミピド錠100mg3錠 1日3回朝・昼・夕食後
  3. ランソプラゾール30mg1CP 1日1回朝食後
  4. チオトロピウム臭化物水和物・オロダテロール塩酸塩吸入剤1キット 吸入1回2吸入

【生活歴】

 喫煙:1日20本×50年

 飲酒:なし

 職業:土木(重機オペレーター) 粉塵やアスベストの暴露なし

【画像検査】

骨シンチにおいて第6胸椎に集積が見られた。 (図1)
胸部CT画像において右肺主気管支から肺動脈、上大静脈へ腫瘍が浸潤している状態。 (図2)

【診断名】

肺門部肺線癌(adenocarcinoma,cT3N2Mo,stageⅢB)

【治療方針】

 化学放射線治療

 (化学療法と放射線照射を組み合わせ、がんの縮小を図る治療法)

 右肺門部から縦隔に対する根治照射60Gy/30Fr/6week

治療上問題が発生

 患者に化学療法が開始され末梢ルートから抗がん剤の投与が開始された。しかし血管外漏出に伴い皮膚トラブルが発生し皮膚科介入となり末梢ルートからの薬剤投与が困難な状態となった。このことから中心静脈カテーテルの挿入が必要な状態となった。

中心静脈カテーテルの選択と挿入部位

 選択肢としてCVポート、CVC、PICCが挙げられた。腫瘍は上大静脈を浸潤していること、放射線治療により鎖骨下静脈、無名静脈が拡張している状態。内頸静脈からCVCを留置することで放射線の影響により血栓形成(腫瘍により炎症によるもの含め)の可能性があり危険度が高い状態であった。このことから腫瘍が縮小したらCVポートの挿入適応であると判断された。現状における中心静脈カテーテルの選択と部位は、比較的カテーテル先端位置の調整を行いやすいPICCの挿入が妥当であると判断された。そこで、PICC挿入が可能な特定看護師へコンサルテーションとなった。

他職種とのPICC挿入に関する検討 (図3)

 主治医である呼吸器内科をはじめ、上部消化管外科、放射線技師、がん放射線療法看護認定看護師と共に治療方針の再確認を行なった。化学療法における薬剤投与の方法と放射線療法における照射位置の確認を行い、PICCの先端位置の決定を行なった。

PICCカテーテルの挿入部位と先端位置の決定(図4)
PICCカテーテルの挿入部位と先端位置の決定(図5)

 エコーによるプレスキャンを実施。右尺側皮静脈:血管径 4.5mm上腕動脈まで8mm以上離れており神経走行がない。皮膚からの深度が8から10mm程度。左尺側皮静脈:血管径 3mm上腕動脈まで10mm以上離れて神経走行がなく皮膚からの深度が5から7mmであった。上腕静脈は左右ともに動脈や正中神経の走行により穿刺困難な状態であった。このことから右尺側皮静脈から穿刺を行い、留置を行なった。PICCの先端は右鎖骨下静脈をこえて腕頭静脈に留置することができた。

PICC留置後の注意点と共有

 PICC留置中の注意点として、上腕の可動によりPICC先端が変化する可能性があるため化学療法実施前には胸部X線にてPICC先端位置の確認を行なった。病棟看護師と連携しPICC留置長の確認と刺入部の観察を行いズレの早期発見と防止に努めた。また血栓形成に注意してDダイマー等の血液データの確認を行いながら管理を実施していった。

最後に

 今回、主治医をはじめ、他科の医師や認定看護師、特定看護師、放射線技師、病棟看護師と共に患者の治療に向けて協働することができた。職種間の相互理解と役割分担をすることでそれぞれの専門性を活かしながら最善の方法を導き出すことができたと考える。

 本来、PICCの挿入は先端を大静脈-右心房移行部の手前(SVCの下1/3)に留置が望ましい。しかし、今回は病態や治療方針から留置できない状態であったため、PICCの留置長を調整し対応した症例であった。昨今では、腋窩静脈近傍に留置するMidlineカテーテルが発売されたので、こういった症例の場合Midline カテーテルを選択することができたのではないかと考える。14日間留置できる安定した静脈ルートであること、PICCと比較し合併症率を低減していること、腋窩静脈近傍に留置するためカテーテル位置確認のためのX線撮影が必要なく、カテーテルからの頻回採血が可能であるためである。当院ではまだ採用されていないため今後採用に向けて取り組んでいく。

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