Document ハンドブック・資料

1.米国のガイドライン
ガイドラインは抗がん薬曝露を防止するために必要な事項を示す指針で、抗がん薬を取り扱う医療 従事者にとってよりどころとなる重要なものです.抗がん薬が正常細胞にも影響を及ぼすことが示唆されて以来1)2)、北欧諸国では1970年代から、米国では1980年代から、国家3)や職業団体4)5)がガイドラインを策定し、遵守するように勧告してきました(第Ⅰ章参照石井執筆)。
さらに米国の国立がん研究機関(NIOSH : National Institute for Occupational Safety and Health )のアラート(警告)、国際がん薬剤師学会(ISOPP: International Society of Oncology Pharmacy Practitioners )のスタンダードなどによって、抗がん薬の安全な取り扱い方が提唱されています(第Ⅱ章参照佐々木執筆)。
2.日本病院薬剤師会のガイドライン

1991年に日本で初めての抗悪性腫瘍薬の曝露を防止するための指針として、日本病院薬剤師会(学術委員会・第1小委員会)が「抗悪性腫瘍薬の院内取扱い指針6) (非売品)」を作成しています。掲載内容は、抗悪性腫瘍剤の院内取り扱い指針と注解、抗悪性腫瘍剤の一覧、抗悪性腫瘍剤の取扱い上の注意と毒性の比較、抗悪性腫瘍剤を扱う際のRisk Factor、設備・備品・用具(注射器具や個人防護具)、抗悪性腫瘍剤の取扱いに関する実態調査などです。これは、日本では「抗がん薬による職業性曝露」が医療従事者に十分認識されていない時に作成されたものですが、非売品ということもあったためか、看護師には波及しませんでした。2005年に改訂版として「抗がん剤調製マニュアル」が出版され7) 、2014年にはその第3版が発行されています8) 。抗がん薬・注射器具・個人防護具・注射用抗がん薬の基本的調製手順・抗がん薬取り扱い基準等について詳述されています。看護師にとっても抗がん薬についての知識や、抗がん薬混合調製の安全な方法など大いに参考になるガイドラインです。
3.看護師のためのガイドライン
抗がん薬の混合調製・点滴ラインの接続は、薬剤部で薬剤師が実施している施設が増加傾向にあります。施設にもよりますが、抗がん薬が投与されるまでの看護師が曝露の機会は減っているものの、投与開始から投与中・投与後の患者のケアと使用した器財の処理は看護師の業務となっています。そこで、抗がん薬治療に関わる看護師のために各看護業務における曝露防止策を具体的に示すガイドラインが必要です。
(1)米国がん看護学会のガイドライン
米国のがん看護学会(ONS:Oncology Nursing Society)は、1990年代から箇条書きのガイドラインを作っていたようですが、2003年に本の形式の「SAFE HANDRING of Hazardous Drugs」を刊行しました5) 。その内容は、有害薬剤(Hazardous Drugs)の定義、職業性曝露のリスク、コントロールのヒエラルキー、与薬準備、安全な用具、与薬方法、与薬後患者の体液の処理、与薬後に排泄物等で汚染されたリネンの取り扱い、有害薬剤の処分、有害薬剤がこぼれた時の処理、有害薬剤取扱い職員の医療監視、職員の教育と訓練、有害薬剤取扱いのチェックリストから成っています。2011年には第2版が発行されていました9) 。第2版は、有害薬剤の取扱いに関する新規の文献に基づいて各内容が追加・改訂されています。
(2)看護師のための抗がん薬取り扱いマニュアル

筆者らは、日本の看護師の抗がん薬曝露に対する認知と安全行動、抗がん薬の取扱い状況等について調査を重ね、国内外の関連する論文やガイドラインを読み進めているうちに、日本の看護現場で使用できるガイドラインが必要と考え、2005年に「看護師のための抗がん薬取り扱いマニュアル(案)」を作成してみました。その内容は、Ⅰ.抗癌剤と取り扱う医療従事者の健康問題、Ⅱ.医療従事者の抗癌剤曝露を防護する方法(11項目)、Ⅲ.安全な抗癌剤取扱いのチェックリストです。このマニュ アルが現場に適当かどうかを確認するために全国の病院の看護部長に送付し評価していただきました10) 。78病院の看護部長から、『妥当であり、導入したい』との回答が得られ、出版してほしいとの希望も出されました。
そこで内容を整備し、2007年に「看護師のための抗癌剤取り扱いマニュアル」を発行しました11) 。それまで日本では看護師に向けたガイドラインがなかったため、多くの施設で看護師や薬剤師の参考にしていただきました。2013年には、「看護師のための抗がん薬取り扱いマニュアル第2版」を作成しました12)。第2版では新たな調査の結果や健康への影響に関する測定結果の紹介のほか、抗がん薬与薬のために新しく開発された種々のデバイスの使い方など、全体的に加筆修正をしております。患者や家族への曝露防止を指導するための指針、また、筆者らが米国の病院で視察した日本では見られない防止策や防護具の紹介も掲載しております。
ここに紹介しましたガイドラインやマニュアルは、各施設・各部署で独自のガイドラインを作成する際の参考になるのではないかと考えられます。
日本臨床腫瘍学会、日本がん看護学会、日本臨床腫瘍薬学会が合同で、がんの薬物療法における曝露対策のためのガイドラインを策定中とのことです。ガイドライン策定とともに日本の医療現場の曝露対策が進歩することが期待されます。
引用文献
- ISOPP Standards of Practice Safe Handling of Cytotoxics Disclaimer, Journal of Oncology Pharmacy Practice, Vol 13 ,2007
- 遠藤一司 他:抗がん薬調製マニュアル 第3版 抗悪性腫瘍剤の院内取扱い指針、 じほう 日本病院薬剤師会、2014
- 石井範子 編:看護師のための抗がん薬取り扱いマニュアル 曝露を防ぐ基本技術 第2版、ゆう書房、2013
- 抗がん剤曝露対策協議会:ww.anti-exposure.or.jp/(2014.12参照)
- 菊地由紀子、石井範子、工藤由紀子 他:抗がん剤化学療法中及び治療後の看護における曝露防止の現状,日本がん看護学会誌27、378、2013
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