Document ハンドブック・資料

1.排泄物・吐物の処理時の曝露対策
生体内に取り込まれた抗がん薬は、代謝や排泄によって体内から消失します。抗がん薬の排泄においては、主に腎臓から尿中へ、また肝臓から胆汁中(糞便中)へという経路をたどります。そして、主要な抗がん薬は48時間以内に尿中や糞便中に排泄されます。したがって、抗がん薬の治療をしている患者の排泄物を取り扱うときは、治療終了後48時間までを「曝露防止策を実行すべき時間」とし、必ず防護具(手袋、ガウン、マスク、フェイスシールドなど)を装着する必要があります1)2)3) 。ただし、抗がん薬の種類によっては、排泄されるまでの時間が48時間よりも長いものもあります2) 。詳細については「看護師のための抗がん薬取り扱いマニュアル4) 」15~16ページを参照してください。また、患者の腎機能障害や、胸水や腹水の貯留によっても、排泄が遅延することがあります。
トイレで排泄する場合
トイレでは、尿の飛び跳ねによる周囲への汚染が、曝露の原因となります。そのため、男性患者にも立位ではなく座位で排尿してもらい、便器には蓋をしてから(蓋がない場合には、吸水性のシートなどを便器に被せてから)排泄物を流してもらうなどして、尿の飛び跳ねによる汚染を最小限にする必要があります。また、便器には抗がん薬が残らないよう、2回流してもらいます。なお、尿量を計測するためのカップや蓄尿に用いる容器は使い捨てとします。可能であれば、トイレは抗がん薬を服用している患者専用のものを設けるのが望ましいと考えます。
トイレの清掃には2%次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤)を用います。清掃の際にも必ず防護具を装着します。清掃担当職員の抗がん薬曝露を防止するために、具体的な清掃方法とその必要性について十分に説明しなければなりません。
床上排泄やポータブルトイレを使用する場合
周囲に排泄物が飛散しないように注意します。高分子吸収剤入りの差し込み式便器用カバーやポータブルトイレ用カバー(図1)を用いると、尿を固めて処理することができるため、周囲への飛散を最小限に抑えることができます。

オムツに排泄する場合
尿中や糞便中に含まれる抗がん薬によって患者の皮膚に傷害を与える危険性があります。オムツは使い捨てとし、排尿・排便後はその都度患者の陰部や殿部を石けんで洗浄します。
膀胱留置カテーテルを挿入している場合
尿は飛散させないように、集尿バッグに入ったままの状態で廃棄するのが望ましいと考えます。集尿バッグ内の尿を容器に移す必要がある場合には、使い捨ての容器を用いて廃棄します。
ストーマパウチの取り扱い
排泄物との接触を最小限にするため、ストーマパウチは使い捨てとします。パウチが閉鎖しているワンピース型ストーマパウチを使用するのが望ましいと考えます。
体液の取り扱い
腹水・胸水などの体液をドレナージする場合は密封できるドレナージバッグを用います。体液は、排液バッグに入ったまま廃棄します。
吐物の取り扱い
吐物を入れるバッグは防水性のものを使用します。バッグへ嘔吐後、ただちに密閉しそのまま廃棄します。嘔吐用のバッグは凝固剤入りのものや逆流を防止する機能の付いたものを用いると、嘔吐時の吐物の跳ね返りや逆流を防ぐことができます。
2.汚染リネンの処理時の曝露対策
患者の体液(排泄物や吐物、汗など)で汚染されたリネン類の取り扱いにおいても、治療終了後48時間までを「曝露防止策を実行すべき時間」とします。
患者の体液で汚染したリネンを交換する場合
必ず防護具を装着してからリネン交換を行います。抗がん薬が付着したリネンが入っていることがわかるよう、専用のラベルを貼った水溶性・不透過性のランドリーバッグに入れ、洗濯機で2度洗いをします。また、洗剤に加えて次亜塩素酸ナトリウム入りの漂白剤を用います。洗濯担当従業員がいる場合は、その従業員に対しても曝露防止の具体的方法について十分説明する必要があります。失禁や嘔吐している患者のリネンは使い捨てとするのが望ましいと考えます。
在宅患者の場合
患者の体液で汚染された洗濯物は直接洗濯機に入れ、通常の洗剤を用いて2度洗濯します。家族との洗濯物とは分別し、次亜塩素酸ナトリウム入りの漂白剤を用いるのが望ましいと考えます。
3.汚染物の廃棄時の曝露対策
治療終了後48時間以内の患者の排泄物や吐物で汚染された物(オムツ、膀胱留置カテーテル、ストーマパウチ、リネン、防護具など)を廃棄する際には、密閉式プラスチックバッグに入れ有害廃棄物専用の廃棄容器に捨てます。在宅で処理する場合は二重のビニール袋に入れて密封し、廃棄します。患者や家族にも、排泄物の取り扱い方法や廃棄物の処理、分別方法について十分に指導しておく必要があります。
引用文献
- American Society of Hospital Pharmacists:ASHP Technical assistance bulletin on handling cytotoxic and hazardous drugs,Am J Hosp Pharm,47:1033-1049、1990.
- Yodaiken RE:OSHA work practice guidelines for personnel dealing with cytotoxic (antineoplastic) drugs,Am J Hosp Pharm,43:1193-1203,1986.
- Eileen M,Glynn‐Tucker:Safe handling of hazardous drugs. Pittsburgh,Oncology Nursing Society,1-56,2003.
- 石井範子編著:看護師のための抗がん薬取り扱いマニュアル―曝露を防ぐ基本技術・第2版、p.15-16、p.70、ゆう書房、 2013.
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