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Cardinal Health VAD Seminar推しのMidline!!
~新たなバスキュラーアクセスデバイスを使いこなす~(1:06:35)
演者:小坂 鎮太郎 先生(東京都立広尾病院 病院総合診療科 部長)
開催日:2024年12月12日(木)19:00~20:00
Cardinal Health VAD Seminar レポート
講師:小坂 鎮太郎 先生(東京都立広尾病院 病院総合診療科 部長)
<セミナー要約>
- 入院関連合併症を予防するためには、適切な栄養介入が重要となる
- SPN(Supplemental Parenteral Nutrition)で死亡率や予後が改善
- MidlineカテーテルはSPN等で効果的に使用できる
- Midlineカテーテルは感染率が低く、身体拘束の必要性も低い
- カテコラミンや抗菌薬等の侵襲性の高い薬剤も使用可能と考えている
■合併症予防と在院日数短縮のための新しいアプローチ
当院の総合診療科の患者は高齢者の方が多く、フレイルで低栄養の患者が多い為、合併症が起こりやすい。平均在院日数を短縮する為には、入院中の合併症(せん妄、感染症、転倒など)を避けることが重要となる。特にエネルギー負債が多いと合併症が増え、予後が悪化するため、入院中の栄養管理が重要となる。
最近では、ICUにおいて、末梢静脈栄養を補助的に使用すること(SPN: Supplemental Parenteral Nutrition)で、入院期間の短縮、死亡率の低下、QOL(生活の質)の向上が期待できることが示されている。特に腹部外科手術後の患者に対して、SPNを施行することで、術後早期の充足率が有意に高まり、感染症の合併症を9.7%減少させる効果が確認されている(表1)。また、アミノ酸が含まれた静脈栄養製剤を補助的に使用することで、死亡率や予後が改善されることも示されている。実際の当院の臨床試験でも、誤嚥性肺炎の患者43名に実施し、93%が経口摂取を再開でき、平均在院日数を短縮できたことから効果を感じられている。
表1:Primary and Secondary Clinical Outcomes During Intervention and Follow-up

E-SPN(Early-Supplemental Parenteral Nutrition) L-SPN(Late-Supplemental Parenteral Nutrition)
Effect of Early vs Late Supplemental Parenteral Nutrition in Patients Undergoing Abdominal Surgery.JAMA Surg. 2022;157(5):384-393.
一方、静脈栄養に対する懸念は血流感染や留置に関わる機械的合併症の発生である。これに対処するために、新しいデバイスが開発された。従来の中心静脈カテーテル(CVC)は留置時の機械的合併症のリスクがあるため、より安全な末梢静脈からのアクセスが求められ、PICCが登場した。さらに、中心静脈まで入れなくても、腋窩・鎖骨下までカテーテルが入れば十分といった場合に、 Midlineカテーテルが登場した。このデバイスは安全性が高く、アクセスが簡便であり、米国では既に使用されているが、日本においても2024年からデバイスが発売された。患者の予後改善や業務フローの改善に貢献するため、 Midlineカテーテルの活用を当院では積極的に行っている。

■Midlineカテーテルの安全性と有効性
前述したように、 Midlineカテーテルは、従来のCVCやPICCよりも合併症が少なく、安全性が高いことが示されている。腋窩付近までしか挿入されない為、頸部や胸腔内を損傷するリスクもほとんどなく、レントゲン確認が不要である。また、 Midlineカテーテルは、特に感染症のリスクを減少させることが知られ、PICC対比1/4に減るとされたメタアナリシスも発表されている(表2)。 しかし、カテーテル先端が比較的表層にあるためか血栓症リスクがあるため、適切な管理をして予防しながら使用することが重要である。また、留置期間は14日程度の使用に特に適しているとされており、15日以上の長期使用が予想される場合はPICCが推奨される。
表2:Comparing Complication Rates of Midline Catheter vs Peripherally Inserted Central Catheter. A Systematic Review and Meta-analysis.

Open Forum Infections Diseases, Volume 10, Issue 2, February 2023, ofad024,
https://doi.org/10.1093/ofid/ofad024
さらにMidlineカテーテルは、身体拘束の必要性が低く、 拘束を避けることでせん妄の予防や認知機能の維持が期待できる。これはシステマティックレビューでもPICC/Midlineの使用は身体拘束が増加しないことが示されている(表3)。皆経験されていることだが、経鼻胃管カテーテルや内頚静脈留置のCVCが留置されていると身体拘束をせざるを得ない状況があるが、PICC/Midlineであれば気になりにくい位置に輸液ラインを通すことで身体拘束の機会を減少できる。
PICC/Midline使用による身体拘束の減少
表3:Characteristics of Patients with and without Physical Restraints

Prevalence and Influencing Factor of Physical Restraints in Intensive Care Units: A Retrospective Cohort Study. Risk Management and Healthcare Policy. 2023 May 19;16:945-956
【参考】
広尾病院 2023年4-10月の6か月間で挿入した32本のMidlineカテーテル、12本のPICC、6名の経鼻胃管留置患者における身体拘束の使用の有無
→PICC/Midline 2%(1例)、経鼻胃管 83%(5例)
■当院のプロトコールとその効果
最後に当院で実施しているプロトコールを紹介する。EFFORTで栄養計画のために使用されたアルゴリズムを少し改変して使用している。違いは、経口栄養と補助栄養剤の摂取が難しい場合は、5日まで待たず3日で経鼻胃管/PEGもしくはPICC/Midlineを用いたSPNの判断をする。拘束なしで栄養投与出来れば、せん妄を予防できて認知機能面や精神機能面を維持して退院することができる。そういった方には、経腸・経口栄養しながら、不足している栄養をSPNで補う判断はお勧めである。
こういったプロトコールを実施していることで、急性期での回復が促進され、患者のQOLが向上することが期待できる。

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