Column お役立ち情報
Midlineカテーテルは、末梢静脈カテーテル(PIVC)とPICCの中間的な位置づけを持つ血管アクセスデバイスです。6~14日程度の輸液療法に適しており、中心静脈カテーテルを必要としない症例で選択されます。本ページでは、Midlineカテーテルの定義、適応、管理方法、他カテーテルとの比較を解説します。
目次
Midline カテーテルとは
Midline カテーテルとは、「尺側皮静脈または橈側皮静脈に挿入し、先端は腋窩付近までであり、中心静脈まで挿入しない約8-20cmのカテーテル1)」とされています。
Midlineカテーテルは、高頻度で発生する末梢静脈カテーテル(PIVC)の合併症(皮下漏れや血管痛等)の低減や頻回穿刺の機会の低減が期待できる安定した静脈ルートです。患者にあわせた適切なバスキュラーアクセスデバイスの選択を可能にします。

バスキュラーアクセスデバイスの選択
Midlineカテーテルは、6日~14日の輸液療法が必要な症例に選択できるバスキュラーアクセスデバイスです。また、6日未満であっても末梢静脈確保が困難な症例では、Midlineの使用を検討してください。
バスキュラーアクセスデバイス選択のアルゴリズム1)

「血管内カテーテル関連感染防止CDCガイドライン2011」では、「静脈投与期間が6日を超える場合は、ショートタイプの末梢静脈カテーテルの代わりにミッドラインカテーテルまたは末梢静脈挿入型中心静脈カテーテル(PICC)を使用すること」とカテゴリーⅡにて推奨されています。
Midline カテーテルの適応
Midline カテーテルの適応
輸液投与期間:6-14日程度の輸液投与が見込まれる患者
末梢静脈確保困難患者(高齢、担癌患者、肥満、浮腫、片麻痺等)
侵襲性の高い薬剤投与(アミノ酸含有輸液製剤/抗がん薬等)
長期投与(肺炎/感染/術後抗菌薬長期投与)
頻回採血
※TPN等の高浸透圧薬剤や持続的な壊死性抗がん薬の投与は不可
Midline カテーテルの特徴
Midline カテーテルは14日間を目安に長期留置できるカテーテルであり、合併症率も比較的低く抑えることが期待できます。
ベッドサイドで留置可能でカテーテル位置確認のX線も必要なく、PICCと比較して簡便な留置が期待できます。

(「Midline カテーテル 管理マニュアル」監修:東京都立広尾病院 病院総合診療科/小坂 鎮太郎 先生)

Midlineカテーテルは
14日間留置できる安定した静脈ルート2)

Midline カテーテルは
PICCと比較し合併症率を低減3)

Midline カテーテルは
カテーテル位置確認のためのX線撮影が必要なし4)

Midline カテーテルは
カテーテルからの頻回採血が可能5)
Midlineカテーテルの留置
Argyle™ Fukuroi Midline カテーテルは、CVC・PICC同様のガイドワイヤを先行させるセルジンガー方式での留置が可能です。
X線を用いたカテーテル先端位置確認の必要がないため、ベッドサイドで比較的簡便に留置が可能です。
カテーテル留置
挿入部位
尺側皮静脈または橈側皮静脈
カテーテル先端位置
腋窩静脈付近(中心静脈には入らない)
留置期間
~14日間
※近年は適正留置期間が延長されつつあり、海外では~28日まで適切としているケースが増えてきている





関連動画:Midline手技動画(0:04:30)
Midlineカテーテルの管理
Midline カテーテルは長期留置を行うカテーテルであり、PICCと同様の管理を行ってください。
観察項目
- ドレッシング材が剥がれていないか
- 挿入部位の発赤、熱感、疼痛、排膿の有無
- カテーテルが抜けていないか(挿入長マークの確認)
カテーテル固定
カテーテル挿入部位は滅菌透明ドレッシングを使用します(発汗や出血等がある場合はガーゼドレッシング)。


● フィルムドレッシングは7日毎に交換する
● ガーゼドレッシングは2日毎に交換する

※剥がれや血液等の汚染を認めた場合は交換する
※必要に応じてナートをかける
関連製品:Argyle™ Fukuroi カテーテル フィクスチャ(無縫合固定具)
カテーテルのフラッシュ/ロック管理
- 未使用時
- 1日1回生理食塩液等でパルシングフラッシュ(10mL) → ヘパリン加生理食塩液で陽圧ロック
- カテーテル使用前後
- 生理食塩液でパルシングフラッシュ(10mL)
パルシングフラッシュ
プランジャーを押す・止めるを繰り返し、断続的に生理食塩液を注入することでカテーテル内に乱流を起こし内腔の物理的洗浄効果を高めるフラッシュ方法です。
3mL注入→少し待つ を繰り返します。
関連FAQ:パルシングフラッシュとは何ですか。(動画あり)
陽圧ロック
カテーテルの内腔への血液の逆流を防止するため、ロック液を必要量(プライミングボリューム×2+α)注入後、クランプを閉じてからシリンジを引き抜きます。

関連FAQ:陽圧ロックとは何ですか?(画像あり)
輸液ライン
輸液ラインやカテーテルを操作する前に必ず手指衛生を実施します。
輸液ラインや閉鎖式プラグ、カテーテルを接続する際にはハブを70%アルコール綿でゴシゴシしっかりと消毒します。
輸液ラインの交換周期は施設ごとに基準を設けて実施してください。
輸液投与時の注意点
投与前に必ずカテーテル種類を確認してください。
(Midline カテーテルではTPN投与等が適応外であるため)

カテーテルからの採血方法6)7)
- シリンジを接続し、血液の逆流を確認
- 5mLの生理食塩液でカテーテル内をフラッシュ
- 始めに採血した血液5mLは廃棄
- 新しいシリンジで必要な検体量の血液を採取
- 採血終了後10mLの生理食塩液でパルシングフラッシュを行う
- ヘパリン加生理食塩液で陽圧ロックをする
Midline カテーテルからの造影剤注入
末梢静脈カテーテル(PIVC)からの造影剤高圧注入が一般的ですが、Argyle™ Fukuroi Midline カテーテルは耐圧タイプのラインナップとなっております。
患者への余分な穿刺機会を低減することで、患者QOL向上、準備の手間の削減につながります。
ダブルルーメンの場合、造影剤の高圧注入はメインルーメンから行ってください。
サブルーメンは耐圧性能がなく、液漏れ・カテーテルの破断・先端位置のずれ等のおそれがあるため、造影剤の高圧注入投与は行わないでください。
メインルーメンのハブ(コネクタ)色は紫色で、クランプには最大注入速度を印字しております。
Argyle™ Fukuroi Midline カテーテルの耐圧性能
最大注入速度は、粘度6.1(mPa・s)の液体を用いた際の社内試験結果に基づいています。
なお、粘度はヨード含有量300mgl/mLの造影剤を37℃下で使用した場合を想定しています。

導入事例
まとめ
Midlineカテーテルは、末梢静脈カテーテルと中心静脈カテーテルの中間に位置するデバイスとして、比較的長期間の静脈アクセスを必要とする症例に有用です。
静脈ルート確保が困難な複数の慢性疾患を抱える高齢患者や、静脈ルート確保が重要な集中治療領域において、患者にあわせた適切なバスキュラーアクセスデバイスの選択を可能にします。
比較的新しいデバイスであることから、適応や管理方法について、理解を深めたうえで運用することが重要です。
Midline カテーテルについてのお役立ち情報
MIdlineカテーテル ケースレポート一覧(他施設の取り組み)
Reference
1.O’ Grady, N. P. et al. Guidelines for the prevention of intravascular catheter-related infections. Clin. Infect. Dis. 52, e162–e193 (2011).
2.Chopra V, Flanders SA, Saint S, et al; The Michigan Appropriateness Guide for Intravenous Catheters (MAGIC) :Results from a multispecialty panel using the RAND/UCLA appropriateness method. Ann Intern Med. 2015;163
(6)(suppl):S1-S40.
3.Swaminathan, L, Flanders, S, Horowitz, J, Zhang, Q, O’ Malley, M, Chopra, V. Safety and outcomes of midline catheters vs peripherally inserted central catheters for patients with short-term indications: a multicenter study. JAMA Intern Med 2022;182:50–58.
4.Simonov M, Pittiruti M, Rickard CM, Chopra V. Navigating venous access:a guide for hospitalists. J Hosp Med. 2015 Jul;10(7):471-478.
5.Chopra V, Flanders SA, Saint S, et al; The Michigan Appropriateness Guide for Intravenous Catheters (MAGIC) :Results from a multispecialty panel using the RAND/UCLA appropriateness method. Ann Intern Med. 2015;163
(6)(suppl):S1-S40.
6.関口昌央, 荒川ゆうき, 大隅朋生, 他 中心静脈カテーテルからの逆流採血方法の差異とタクロリムス血中濃度測定の誤差に関する検討. 日本造血細胞移植学会誌 2016 5(3):87-92,
7.Access Device Guidelines: Recommendations for Nursing Practice and Education 2nd ed, Edited by Camp-Sorrell D, Oncology Nursing Society, Pittsburgh, 2004
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