Case report ケースレポート
中心静脈栄養、NSTの成り立ちについて振り返ってみましょう。
米国で1960年代にDudrickらが、腸疾患の新生児に中心静脈から完全静脈栄養(TPN)を投与したのが最初です。
この栄養療法は経口摂取ができなくなった患者に対して有効ということで全米に広がりました。
そのTPNが開発されたことを機に、消化管を経由しない高度な栄養療法に対応する為、専任・専従のスタッフが求められるようになり、医師、薬剤師、看護師、栄養士などによるチームが各施設で発足され、NSTとして活動するようになりました。
その後間もなく、日本にもTPNが広く普及しました。
当初は、IVH(Intravenous Hyperalimentation)という言葉がよく用いられていました。
その背景としてDudrickらの論文の中でIVHという表現を使用していたためと思われます。
侵襲時には意図して通常の必要量より多く投与するという意味で使用していたようですが、近年では、IVHという表現では“過剰投与”という意味に捉えられることから、TPNと言われるようになってきました。
中心静脈からのTPN投与が普及した反面、中心静脈による医療事故、感染、合併症が問題視され、特に消化管を使わないことによって発生するBacterial Translocationの観点からも、「消化管が使えるなら、消化管を使おう」と言われ、NST活動が活発になってきました。
栄養投与の第一選択は消化管を使用した経腸栄養ですが、消化管が使用できない場合は静脈栄養が実施されます。
静脈栄養は、末梢静脈からの投与(PVC)、中心静脈からの投与(CVC、PICC、CVポート)のルートがありますが、それぞれメリット、デメリットがありますので、患者の状況や投与薬剤の種類によって適切にルートを選択する事が重要です。
また、中心静脈留置については、2019年には医療事故の再発防止に向けた提言第1号「中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析 -1報-」※も出され、CVカテーテル適応の厳格化、機械的合併症のリスクがあることからCVカテーテルの留置は慎重に検討し、PICCの代替も考慮する事、超音波を用いて血管のプレスキャンを実施する事等が記載されています。
中心静脈栄養を選択する際は、これらの内容も考慮して選択する必要があります。
そこで今回は、PICCの適応を具体例と共にお示し頂いている東邦大学医療センター大森病院のニュースレターをご紹介いたします。
(※出典:一般社団法人日本医療安全調査機構 医療事故調査・支援センター)
KANGAROO NEWS Vol.33
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