カーディナルヘルス メールマガジン コラム
カーディナルヘルス メールマガジン コラム【第1回】
~PICC抜去困難~

著者:国立病院機構 呉医療センター・中国がんセンター
救急科 診療看護師 国島正義 先生
はじめに
当院では、診療看護師2名が在籍し、タスクシフトとして各診療科医師からの依頼を受け、2016年よりPICC挿入活動を行っています。現在、年間約600~700件のPICC挿入を行っており、活動開始から2023年末までに4,000症例以上経験しています。その中で、PICCの合併症や特殊な症例など、さまざまな経験を積んできました。今回は、これまでに遭遇したどのような対応を行ったらよいか判断に困った2症例についてお話したいと思います。
症例
症例1 35歳男性
精神運動発達遅滞、難治性てんかんで小児科かかりつけの患者。蜂窩織炎に対する加療のため入院となりました。治療として抗菌薬投与となりましたが、末梢静脈路確保困難なため、薬剤投与経路確保目的で右上腕へ4Frシングルルーメンの挿入を行い32㎝で固定しました。PICC挿入して第33病日に状態改善傾向であることから、PICC抜去の方針となりました。PICC抜去を行ったところ、カテーテルの残り10cmのところで抵抗が強くなり抜去困難となりました。
症例2 77歳女性
環椎骨折および右手蜂窩織炎で整形外科入院となり、入院経過中に第1第2腰椎に化膿性脊椎炎を併発しました。長期的な抗菌薬投与が必要となり、薬剤投与経路確保目的で左上腕へ4Frシングルルーメンの挿入を行い39㎝で固定しました。PICC挿入して第79病日に状態改善傾向であることから、PICC抜去の方針となりました。PICC抜去を行ったところ、カテーテルの残り20cmのところで抵抗が強くなり抜去困難となりました。
対応
ご紹介した2症例はPICC抜去しようとしたところ、カテーテルが途中から抜けなくなったPICC抜去困難症例です。症例1の対応では、循環器内科へ相談し、透視下でカテーテルにガイドワイヤーを通した状態で牽引することで抜去することができました(写真1)。症例2の対応では、担当診療科が整形外科であったこともあり、局所麻酔下で血管壁を切開し、観血的に抜去を行いました。観血的に抜去したカテーテルを見てみると、カテーテルに全周性に白色の付着物が見られました(写真2)。この白色の付着物がカテーテルを引き抜くときに血管内で手繰れて塊になったことで、静脈壁を塊が越えることができず、抜去困難となったと考えられます。この付着物は退縮瘢痕化した白色血栓が関与している可能性が示唆されており1)、海外ではフィブリンシースと呼ばれています2)。


カテーテルが抜去困難になった場合の対処方法として、①強引に引き抜く、②カテーテル内にガイドワイヤーを挿入して牽引する、③観血的に静脈切開を行う、という3つの方法があるとされています。①の場合では、カテーテル断裂のリスクおよび血管損傷のリスクがあります。②の方法では、ガイドワイヤーがスタイレットの役割を担うことで抜去しやすくなりますが、カテーテルが閉塞している症例では行うことができません。③の方法は、侵襲的ではありますが、血管壁への強固な癒着がなければ確実に抜去可能です。それぞれの抜去方法の特徴から考えると、抜去時にカテーテルに抵抗が生じた場合、まずはカテーテルが伸びない程度の力で牽引し、それでも抜けない場合は、ガイドワイヤーを挿入して牽引する方法を試すのがよいと考えます。ガイドワイヤーを挿入する場合、カテーテルがどのような状態で牽引できるのかを確認すること、またカテーテルの損傷がないかなどを確かめるためにも透視下で行った方がよいと思われます。それでも抜けない場合は、観血的に抜去する方法を選択するという流れが、患者の侵襲度を考えるとよいのではないかと考えます。
PICC抜去困難症例に遭遇したら、PICCが抜去困難となった原因を考え、より確実に抜去できる方法を検討してもらえたらと思います。
<参考文献>
- 保坂到,中島智博,梅田璃子,他.静脈内に充満する構造物を伴った抜去困難PICCに対して外科的摘出が有効と考えられた小児の1例.日本心臓血管外科学会雑誌(51),118‐122,2022
- Jacquelyn L. Baskin,Ching-Hon Pui,Ulrike Resis,et al.Management of occlusion and thrombosis associated with longterm indwelling central venous catheter.Lancet July11, 374, 159-169,2009
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