手術用手袋装着に伴う手指皮膚炎の問題

手術用手袋は、患者と医療従事者の両方を交差感染から守るための最も重要な個人用防護具のひとつであるが、外部刺激や長時間の手袋装着よる医療従事者の皮膚の健康問題は職業性皮膚疾患として知られており、そのうち、手の皮膚バリア機能の低下によって引き起こされる刺激性接触皮膚炎 (ICD) は、依然として医療従事者を悩ませている問題である。
　この問題は、手術のパフォーマンスを低下させるだけでなく、バリア機能低下によって損傷した皮膚への常在菌の定着が原因で医療関連感染症を引き起こす可能性がある。したがって、ICD 関連の手指皮膚炎は単なる皮膚の問題だけではなく、感染や汚染のリスクが高まる可能性もあるため、決して見逃すことはできない。手指皮膚炎の予防と管理は、感染症の予防と密接に関係している。　・・・

質量分析イメージングによる保湿成分浸透度可視化の試み

このレポートでは、保湿コーティング手術用手袋のコーティング成分のひとつであるグリセロールを代表例として、手術用手袋から人工膜（Strat-M: メルク株式会社） への成分浸透の様子を観察するための in vitro 質量分析イメージング試験結果について報告する。またグリセロールがStrat-M 中をどのように透過するかについても述べる。　・・・

保湿成分の浸透性評価

本研究では、手術用手袋にコーティングされた保湿成分のひとつであるグリセロールの Strat-M 中での分布を、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析イメージングを用いて可視化・評価する方法を開発した。手術用手袋内表面と Strat-M の接触後、グリセロールは速やかに PES1 層に浸透し、　・・・もっと見る